１－１の延長十一回。中日の藤井が右打席で石井の失投をとらえた当たりは、横浜の浜風に乗った。捕球をあきらめ、クッションボールの処理に態勢を切り替えた吉村の頭上を越え、打球は右翼席の最前列に届いた。
　野手陣の思いが乗り移った一発だった。先発の川井は９回を２安打１失点と好投。延長十回も２番手の斉藤が３者凡退で切り抜けていた。だが、打線は奮闘する投手陣を援護できず、七回に井端のソロ本塁打で追いついた後、八回以降は１人の走者も出せずにいた。殊勲打の藤井は、

「ピッチャーが頑張ってくれていたので、貢献できて良かった」

１点を勝ち越すと、森野とブランコにも適時打が出て２点を加え、その裏の反撃を１点に抑えて逃げ切った。藤井と川井。この日の投打の主役は、ウインターリーグでも切磋琢磨（せっさたくま）した仲。藤井は、

「川井さんとはドミニカでも一緒だったので」

と、苦労をともにした左腕の力投が報われた勝利を喜んだ。（サンケイスポーツ）